宿題問題と現場重視のプロセス分析

ちょっと寒くて曇り空の日。空気の色が、透明度の高い夏色から薄暗いグレーがかった秋色に変わりつつある。牛乳の入った暖かい飲み物が恋くなる。

 

さて、先日、家の片付けをしていたら、息子が小学校低学年だった頃、どうしたら忘れ物をしないか二人で話し合ったときのメモが出てきて懐かしくなった。

 

それは、息子が小学二年生の頃の話。

担任の先生との保護者面談で「宿題が出せていないんです」と言われた。私は、毎晩、息子と一緒に宿題をし、ランドセルにいれるところまで確認していたので、先生の言葉にビックリした。

 

そこで、面談から帰宅後に、息子に先生から言われた話をして「明日は、ちゃんと出すんだよ」と声をかけると、「うん」と返事する息子。でも、その後も、宿題のノートに先生の提出済みのサインがなく、出せてない様子だった。

 

「どうして出せないの」と聞いても「わからない」という返事。

半分イライラしながら、どうしたら忘れないようになるか、家で頭をつきあわせ息子と考え、筆箱にメモを入れたり、声を荒立って叱ったこともあるけれど、状況は一向にカイゼンせず。

 

その状態がしばらく続いたので、家で話していてもらちがあかない、現場を見なければ!と、ある日の平日の夕方、息子にランドセルを持たせて、二人で学校に出かけた。

 そして、誰もいない教室で、ランドセルをしょった息子に、教室に入ってから自分の席について、宿題を提出したり授業の準備をする行動を再現してもらった。

 

 その行動をステップに分解するとこんな感じだ。

  1. 教室に入る
  2. 自分の席まで移動し机の上にランドセルを置く
  3. ランドセルの中身(教科書やノート)を引き出しのお道具箱に入れる
  4. 空のランドセルを教室後方の自分のロッカーにしまう
  5. 宿題のノートやプリントを、教室前方の提出場所に提出する
  6. 着席して、朝の会が始まるまで待つ

 

そして、息子の行動を教室で観察して気がついたことは、

  • 学校の子どもの机の上はとても狭く、ランドセルを置いたらいっぱいになる。机の上にランドセルと提出物を並べて置くスペースがない
  • 狭い机の上にランドセルを置いて、たくさんのノートや教科書を出し、お道具箱にしまうのも、小学二年生の小さな手では一苦労で、時間がかかる
  • 息子の机と後ろのロッカーの間には、彼が好きな学級文庫や仲良しの友達の席があり、そこにトラップされると、宿題を提出する前に朝の会が始まる可能性大

 

つまり、今のステップでは、宿題を出すまでに時間切れになり朝の会が始まり、そのまま宿題不提出になってしまうことが、行動をみて始めて理解できた。

また、息子本人は、自分の行動パターンを自覚していなかったので、いくら家で問いつめたところで「わからない」という言葉に嘘はないというのもよくわかった。

まさに”百聞は一見にしかず”だった。

 

学校から帰宅後に、私は観察して気づいたことを息子に話した。そして、各ステップをそれぞれ付箋に書き、どうすれば忘れ物をしないかを息子と話し合った。その結果、

  • 宿題を直接ランドセルから出して提出し、それから残りのランドセルの中身をお道具箱にしまうようステップの並び方を変更する
  • 宿題をランドセルからすぐに取り出せる様、一番上に宿題を入れる

の2点を実行しようという結論に至った。

 

その後、しばらくの間、宿題が提出状況を確認するとともに、新しい手順で行動ができているかを口頭で繰り返し確認した。

 

もちろん、何度も提出忘れはあったけど、本人が自分の行動に意識的になり、出せなかったときでも、「学校に行くのが遅くて、ぎりぎりで宿題が出せなかった」などその理由がわかるようになった。

 

「問題は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こっているんだ!」というのは踊る捜査線の名台詞だけれど、ビジネススクールの生産管理の先生も同じをことよくおっしゃっていた。

「人は思っているほど自分の行動に意識的ではなく、言葉で説明できることに限界がある。なので、言葉に頼るのではなく、実際に自分で現場を見なさい。」

 

息子の宿題提出話は、現場観察が家庭の問題解決にもものすごく役に立つと感じた出来事だった。